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盆栽の樹形を徹底解説

いろんな形のある盆栽だけど大きく分けるとたったの8種類
高村雅子
高村雅子
盆栽妙 店長
  • 更新日:2022/8/25
  • 投稿日:2022/8/25
  1. 盆栽の樹形を徹底解説 盆栽の基本の考え方は自然の縮図や縮景にあります。さまざまな自然環境に生育した樹木の造形美を、小さな鉢の上に反映させるものです。樹の生えている風景・風土をも彷彿とさせる表現方法でもあります。自然に映える木々のそれぞれの個性を風景をもまとって類型化したものが樹形です。

    ここでは盆栽の基本樹形を分類ごとに解説していきます。世の中に存在するすべての盆栽は8種類の基本樹形のどれかに分類されます。樹形をしっかりと学ぶことが目を肥やし盆栽上達への1歩になりますのでしっかりと勉強していきましょう。

    目次

    • 章 盆栽の樹形とは
    • 章 樹形の基本分類
      節 1.懸崖(けんがい)
      節 2.斜幹(しゃかん)
      節 3.直幹(ちょっかん)
      節 4.模様木(もようぎ)
      節 5.文人木(ぶんじんぎ)
      節 6.吹き流し(ふきながし)
      節 7.株立ち(かぶだち)
      節 8.双幹(そうかん)
    • 章 その他の樹形分類
      節 1.双樹(そうじゅ)
      節 2.三幹(さんかん)
      節 3.五幹
      節 4.七幹
      節 5.根連なり
      節 6.蟠幹(ばんかん)
      節 7.寄せ植え
      節 8.石付き
      節 9.石抱き
      節 10.石上樹
      節 11.ほうきづくり
      節 12.筏吹き
      節 13.根上がり
      節 14.根洗い
    • 章 まとめ

    盆栽樹形とは

    樹形は、そのように創作しなければならない、といった樹の形の厳格なルールというわけではなく、あくまで作り手の目安となる形です。自然界で異なった生育環境に育った樹の姿を、想像するためのお手本となるものです。

    先人たちによって作られ、伝えられてきた伝統的な盆栽の形を学ぶことは、盆栽を作る、観賞する上でのポイントをつかむためにとても大事です。

    好みの樹形に仕立てるには、盆栽の知識や技術の習得も必要です。知識や技術を習得すれば、お手本の樹形通りに作ることはできるのですが、自然の姿を感じてこそ盆栽と言えます。

    自然界に自生している樹木の観察や盆栽園などの良質な盆栽の観賞は、樹形への理解と発想の元になります。

    樹形をデザインする

    仕立てる上では、樹種の性質をよく知って置かなければなりません。樹種によってそれぞれ自然界での本来の姿というのがあるので、自生している樹、庭木などをよく見て、その樹の樹形を研究する必要があります。

    樹形というルールはありますが、樹種によって樹形が適するかどうかという点も、注意しなければなりません。

    例えば、スギは直立性なので樹形としてはまっすぐな「直幹」が基本です。「直幹」が基本とはいえ、風雨などで倒れかかった「斜幹」、森や林を投影する「寄せ植え」などが適しています。一方、幹に曲がりのある「模様木」には向いていません。マツであれば屈曲させても「直幹」でもほとんどの樹種に向いているといえます。

    樹種にあった樹形があるので、スギはスギらしく、ウメはウメらしく樹形にしていくことが大事です。鉢金かけをして曲線を作ったとしても、あくまで自然な樹形を形作るためのもので、不自然に見えては盆栽の概念とはかけ離れてしまいます。

    樹種の性質を考慮した上で、それぞれの樹ごとの根張り、幹模様、枝配りなどを検討し、正面を決めます。とにかく樹をよく観察することが大事です。

    樹形作りには“その樹らしさ”が求められるものなのです。樹に合わない樹形に仕立ててしまった場合、樹の特性を無視することになってしまいますから、樹の生長にも悪影響を及ぼします。樹の性質を活かさないということは、樹形を保ちにくくもあり、針金をかけたり剪定したりという手入れも難しくなり、手をかけた割に成果が出ないという風になってしまいます。

    樹形の輪郭

    いずれの場合も全体の姿は、基本的に不等辺三角形となります。

    根張り

    樹形作りにおいて根張りは、建物の基礎の役割を果たしています。根張りは必ずフラットで安定感があるようにしましょう。

    幹模様

    盆栽に正面があることはすでに述べましたが(※盆栽の鑑賞の仕方ページをご参照下さい)、幹模様、すなわち幹が描く曲線を見て、樹のもっともよい面を正面とします。

    枝配り

    樹の幹から生える枝と枝の隙間やバランス的な配慮のことで、左右交互に枝を出しているものがバランスの取れているものと言えます。

    その他樹形の基本

    ・左右非対称であること

    ・幹が下から上へと細くなっている

    ・枝の間隔が下から上にかけて狭くなっている

    ・幹の曲は下の方が大きくなっている

    樹形の基本分類

    樹形の分類は、幹の姿形、幹の数、盆栽と共に用いる材料によって以下のように分類されます。人間が1人1人個性が違うように、自然界に自生する樹も各々が違い、すべての樹が分類上の樹形にあてはまるわけではありませんが、盆栽を育てる上での指標として下記の樹形を覚えておくと、盆栽作りもより楽しいものになります。

    幹の姿形による名称

    懸崖(けんがい)、斜幹、直幹、模様木、文人木、蟠幹(ばんかん)、吹き流し、ほうきづくりなど

    幹の数による名称

    筏吹き、株立ち、三幹、五幹、双幹、単幹、根連なり、寄せ植えなど

    共に用いる素材による名称

    石付き、石上樹など

    1.懸崖(けんがい)

    断崖絶壁や自然環境の厳しい島などでは、風雪で幹や枝が極端に曲がってしまいます。樹が上方に伸びず、なだれや長年の風雪に耐えつつ、岩肌にしがみ付き垂れ下がっているような姿となります。このように幹が屈曲しながら大きく下に垂れているものを懸崖樹形と言います。厳しい自然に耐えて岩肌にしがみついている姿なので、根張りは特に大切です。

    半懸崖

    樹の立ち上がりから枝が下垂し、樹芯が鉢の底くらいのものを半懸崖樹形といい、傾斜地に生えている樹によく見られます。

    大懸崖

    半懸崖よりもさらに枝が下垂し、鉢底より幹や枝が低くなっているものを大懸崖樹形といいます。

    ★樹形づくりのポイント

    鉢から幹がこぼれているような姿ですので、下垂する方と反対側の根がしっかりしている片根張りのものを使います。マツ類では針金で曲げて下垂させる方法もあります。幹が倒れている反対側の根張りを強く出して強調するようにします。下垂する幹に対し、枝は水平に広がるようにします。枝先が下垂していては生気のないものになりますので、枝先を上方に向くように作ります。

    根張り

    下垂しているのと反対側にしっかり根が張っていること。八方根張りでなくてもいいです。

    立ち上がりは屈曲し、下垂しているのがよく、ゆるやかな曲線は適当でない。

    枝の先にも生気が溢れていて上に向いていること。奥行きや安定感を出すだめに枝は幾重
    にも重なるようにします。

    樹冠

    樹の生命力が樹冠に集中している感じを出すことが必要。

    樹形が下垂していますので、浅い鉢は釣り合いがとれません。正方鉢、長方鉢、六角、八角などの深い鉢、盆栽用にはあまり使われない深めの懸崖鉢などを使います。鉢の重さに倒れるのを防ぐ意味と下げられた枝が地表に接しないようある程度深さのある鉢が適当です。

    懸崖向きの樹種

    クロマツ、ゴヨウマツ,ニシキマツ、エゾマツ、ツタ、カエデ、フジ、オウバイ、サツキ、チョウジュバイ、ザクロ、ベニシタンなど

    2.斜幹(しゃかん)

    海辺などのように同じ方向から風が当たる場所、山腹で多く見かける樹形です。強風のために根本から幹が左右どちらかに傾いた樹形です。

    枝の配置や長さが大切で、直幹に比べ不安な体になりやすいので、立ち上がりや枝配りに注意し、安定感を出すようにします。

    ★樹形づくりのポイント

    根張りの高さが違うものがよく、水平なところに置いてみると幹の傾斜が出てきます。この傾斜に合うように枝を配します。これらの条件に合った性質を持っている素材を使うことによって斜幹としての姿が整います。植え付け位置は傾斜している方にゆとりを持たせます。幹の傾斜している反対側に枝を伸ばすと安定感が増し、傾斜している方に枝を伸ばすと、より倒れているような感じになります。

    根張り

    片根張りの形で幹が傾いている側とは反対側の根張りを特に強くすると安定感が出ます。

    幹が曲がって樹芯が中央に戻っていないこと。多少屈曲しているものと、少々傾いているものと両方があります。

    傾いた向きの上部にやや多目に付けます。下部には下垂気味の枝をポイントにして枝を少なくして樹冠側に付けるようにする。

    樹冠

    厚みをもたせ、若干盛りあがっていて整ったものがよい。

    傾斜のある土地を表現できる中深鉢を使用します。通常ですと長方鉢や楕円鉢などを使用するのが一般的です。

    斜幹向きの樹種

    クロマツ、アカマツ、エゾマツ、トショウ、ヒノキ、カエデ、モミジ

    3.直幹(ちょっかん)


    幹が直立した樹形で、樹の幹が立ち上がりから樹の中心に向かって、まっすぐに伸びている樹形のことを言います。根が四方に張り、立ち上がりから上にいくに従って細くなっています。枝配りも前後左右にバランスの取れたものが理想的です。日光や、四方八方からの風を受けてたくましく育った樹形と言えます。

    ★樹形づくりのポイント

    立ち上がりの部分でまがっていないような真っ直ぐに伸びている素材が適しています。幹は割合直立してくれるのでまっすぐに矯正することはできるのですが、立ち上がりの曲がったものは矯正しにくいです。力強さを出すために、高さを出さずに低く作り、枝葉のバランスを取ります。根張りや立ち上がりなどがよくわかるように、下枝は低い位置にしないで、前方の枝は下から3分の1くらい残すようにします。

    根張り 

    八方根張りで、地上に根が露出しており、根元から力強く立ち上がり、安定感が要求される。

    根元から芯までが垂直で、下部は太く、上へと次第に細くなり、樹木の上部まで幹筋が垣間見えること。

    前後に均整が取れ、枝と枝の間隔も下から上にいくほど狭まっていて、枝の太さも上部にいくほど細くなっている。

    樹冠

    丸みを帯びた半円形で、樹勢が集まっているかのようにまとまっていること。

    豪壮さを活かすために長方形の鉢がよく使われますが、楕円鉢も次いで使われます。高さのある直幹作りの樹を幅の狭い鉢に植えつけると、より上へと目指す活き活きとした感じとなり、低いものを横幅のある鉢に植えると安定感が出ます。

    直幹向きの樹種

    クロマツ、ゴヨウマツ、エゾマツ、トショウ、スギ、ヒノキ、コメツガ、ケヤキ、ベニシタン、カリンなど

    4.模様木(もようぎ)

    根張りが力強く、幹が左右にゆるい曲線を描いて立ち上がっている樹種です。左右何れかに傾き、樹芯は中央に戻っていること。幹や枝が前後左右に曲がっている様子を模様を描くと表現します。模様は、寒暖の差や風向きなどの違いなどによってできるものです。自然環境の中で生えている樹の大半が、この樹形となり、日本ではよく見かける樹形です。

    ※幹が模様を描くように曲がっている樹をいう。幹模様が左に流れている感じのものを右勝手、右に流れている感じのものを左勝手と言います。

    ★樹形づくりのポイント

    立ち上がりにはあまり強い模様を出さず、上に行くに連れて細かい模様があるように仕立てます。樹の個性を活かし、樹に合わせて姿を作っていきます。幹模様が前後左右にあると樹に広がりと奥行きが出ます。屈曲している外側の部分に枝を出すようにします。幹模様がゆるい曲線ですので、枝もそれに合った柔らかさを持たせます。樹木の腹の方を正面にするようにし、枝先、幹先もやや前に倒すように作ります。

    根張り

    理想としては八方に根が張っているものがよい。傾いている方と反対側の引き根がしっかりしていると安定感が出ます。

    幹に自然な模様があり、上の方に行くに連れて細かい模様のあるもの。正面にやや傾いていること。

    枝順が多少整わなくても、枝数がある程度多いこと。幹模様の外側に枝を配置し、枝はできれば下垂させます。

    樹冠
    まとまっていて、ある程度大きさのある方が、調和が取れていると言えます。

    通常ですと長方鉢や楕円鉢を使用しますが様々な模様を描きますので、長方鉢、楕円鉢にこだわる必要はありません。樹形の雰囲気に合わせ、丸鉢、木瓜鉢、輪花鉢などを使うとよいでしょう。安定感や適度な重厚感を考え中深鉢が適しているでしょう。

    模様木向きの樹種

    クロマツ、ゴヨウマツ、アカマツ、ニシキマツ、エゾマツ、シンパク、モミジ、カエデ、ブナ、ソロ、ウメ、ボケ、カイドウ、サンザシ、カキなど
     
    ※直立性の植物を除き、ほとんどの樹種が向いています。

    5.文人木(ぶんじんぎ)

    水墨画で描かれるような、軽やかな味わいが持ち味の樹形です。文人が好んだことから名付けられました。幹が細く下枝も少なく、丈も高く、ゆるやかな曲線を描き、いわゆる文人好みの気品や風流さに富んだ樹形です。細長くのびるように、仕上げた樹形ですが、単に細なく伸ばすのではなく、幽玄な味わいを帯びていなければなりません。

    ★樹形作りのポイント

    幹を太くない、枝や葉がなるべく少ない素材を選びます。下枝はほとんど付けず、上部の枝も少なくして下垂気味にバランスを取ります。梢に近い部分の数本でバランスの取れた姿を作ります。幹は大きな曲や斜めに伸びる線を多用し、柔らかい感じを出すようにします。樹高が高い文、枝は長めに作り、これらの枝をやや下垂気味に斜めに伸ばすことにより、飄々とした体に仕上げて下さい。

    根張り

    力強いというより、すんなりとした立ち上がりが大事。

    適当に曲がりを持だせ、優しい感じを出すようにします。細めで、高さがあり、軽やかで、
    すっきりとした印象であること。

    樹冠の近くにつまり気味に、3段程度の枝がついていること。

    樹冠
    こぢんまりとして、まとまっているもの。

    飄々としたやわらかな感じの樹形ですので、長方鉢や楕円鉢の浅い鉢が似合います。樹高に反比例して小さい鉢を使うことも多く、そうすることで樹の高さを強調する方法が取られます。個性ある樹が多いので、丸や多角形などの浅めの鉢が似合います。

    文人向きの樹種

    クロマツ、アカマツ、ゴヨウマツ、エゾマツ、サルスベリ、トショウ、ウメなど

    吹き流し(ふきながし)

    海岸や山頂などの風の強い場所に育った樹が、長年に渡って一方から吹き付ける強い風に吹き流されてできた樹形です。幹や枝が一方になびいており、風の動きを感じさせます。豪快な趣の直幹や蟠幹とは違って、軽快で前衛的な佇まいが特徴です。斜幹と間違えられることがありますが、吹き流しは枝がすべて一方向という点で区別します。

    ★樹形づくりのポイント

    幹も枝も一方向に流れていますので、片枝の素材を選ぶか、片方の枝を落としてしまって片枝にした素材で作る方法があります。幹の方向にはこだわりますが、幹の形の制約は厳しくはありません。一方向にするために幹を針金で固定する場合もあります。枝葉あまり多くつけないようにして、風を受けながらも、上に伸びようとしている風情を出すようにするとよいでしょう。

    根張り

    根張りはそれほど問題ではありません。基本的には枝が向く方向とは反対に根が伸びていることが大事です。

    立ち上がりから正面から見て左右どちらか一方に吹き流されたようになっていること。幹の曲がり方が無造作な感じであること。

    枝もいっぽうになびいているのが理想的です。枝先は上を向いているようにまとまっているといいです。

    樹冠

    風に吹かれた軽快な感じを出すためにも、密集しているよりちらした感じにします。

    浅い鉢のタイプで長方形や楕円形のものが適しています。

    吹き流し向きの樹種

    ゴヨウマツ、エゾマツ、アカマツ、ニシキマツ、エゾマツ、シンパクなど

    株立ち(かぶだち)

    武者の旗を並べているような姿から別名武者立ちと言われます。地際から数本の幹が株になって立ち、それぞれの幹が独立した樹のように見えます。根がそれぞれの幹に個別にあるのではなく、何本かの幹で根を共有しています。株立ちでは主幹は最も高く、太くてしっかりしているものを選びます。主幹とそれ以外の幹のバランスが美しさを決めます。

    ★樹形づくりのポイント

    幹と幹の調和が大切なので、組み合わせをよく考えましょう。また、正面から見て幹が重なったり、交差したりしないようにします。作り方は2種類あります。1つは、樹の根元に近い部分で幹を切って、出てきた新しい芽を育てて株立ちに仕立てる方法です。もう1つは、同じ樹種同士の幹元をしっかりと密着させ、針金で結束して、根元を結合させる方法です。後者の方法で作る場合は、幹に太さ細さの変化を出すと趣が出ます。

    根張り

    根元は太く、つながっており、大地をつかむような八方根張りが好まれます。

    幹の長さや太さに変化があるほど理想とされています。幹数は3・5・7・11・13など奇数が好まれます。

    枝は外向きに強めに張り出させます。枝を密集させず、幹をある程度すっきりと見せます。

    樹冠

    幹はすべて樹冠を有し、最も高くて太い幹が中心となり樹冠を組成します。

    すっきりとした長方鉢で、底から口縁部まで垂直に立ち上がる器形で、胴が真っすぐ伸びたような切立(きったて)のものがこの樹形を引き立たせます。他楕円形のもので薄手の簡素なものが適しています。

    株立ち向きの樹種

    ゴヨウマツ、エゾマツ、スギ、トショウ、カエデ、ブナ、モミジ、イチョウ、クチナシ、ボケ、シャクナゲ、サツキ、チョウジュバイ、オウバイ、ウメモドキなど

    双幹(そうかん)

    根元から幹が2本に分かれて伸びている樹形です。1本は主幹として、幹が太くて高く、もう1本は従幹として低くて細いという、バランスが取れているものがよい双幹樹形といえます。主幹と従幹が同じ高さだったり、高低がつきすぎたりしていても調和が取れなくなってしまいます。幹の切れ目が少し上に位置するものは、途中双幹と呼ばれています。

    ★樹形づくりのポイント

    従幹が主幹に寄り添うように仕立てます。根際に近い部分から伸びる枝を主幹に寄り添うように立てて育てます。従幹側にある主幹の枝数は少なくし、長くならないようにします。一方従幹の外側の枝は長めにします。主幹と従幹の梢が、バランスが取れるよう、反対の方向に向いて立っていることがないようにしましょう。交差したり、近づきすぎたりも姿が悪くなってしまいますので注意して下さい。

    根張り

    八方にしっかりと根を張って、鉢土から露出しているものがよいです。

    主幹も従幹も立ち上がりがすっきりし、地際に近い低い部分で、主幹と従幹が枝分かれしていること。

    枝組が他の幹の枝と競ったりすることなく、補い合うように付いており、下枝より上の方が混んでいるようにします。

    樹冠

    植わっている複数の樹の樹冠それぞれが、まとまって完成していることが好ましいです。

    長方鉢か楕円鉢が相応です。

    双幹向きの樹種

    ゴヨウマツ、エゾマツ、スギ、ヒノキ、カエデ、モミジ、ウメ、カキ

    その他の樹形

    双樹(そうじゅ)

    双幹に似ていますが、2本の樹をひとつの鉢に植えて景を作り出すものです。性質があまり違わない樹同士を仕立てるのが基本です。

    三幹(さんかん)

    3つの幹が1体となり、1本の樹としての調和の美を構成する樹形です。枝を幹にしたものではなく、きちんと根元から3つに別れているのが望ましいです。盆栽作りの中でも特に難しく、3本の幹の太さと樹の高さの違いのバランスを取りつつ、奥行きが感じられるように仕立てます。

    ★樹形づくりのポイント

    三幹は上手にまとめるのが難しい樹形です。ある程度、高さのある素材でないと、各幹のバランスが取りにくくなってしまいます。それぞれの幹のバランスの割合は、主幹に対して副幹は3分の2、1番低いものは3分の1くらいの高さに留めます。

    根張り

    地上に露出していて、しっかりとした八方根張りが理想的です。

    きちんと根元から枝分かれているものが望ましいです。各幹は基本的には鋭角的に立ち上がっているようにします。

    主幹の枝とその他の枝で工夫をして奥行きを持たせるように見せます。

    樹冠

    主幹となる樹冠は、帯びた半円形で、樹勢が集まっているかのようにまとまっていること。

    三幹向きの樹種

    ゴヨウマツ、ブナ、サツキ、モミジ、カエデ、ザクロなど

    ※幹の本数によって、1本なら「単幹」、2本なら「双幹」、偶数は嫌われ、「三幹」、「五幹」、「七幹」となり、それ以上は「株立ち」と言います。

    →根元から複数の幹が伸びているものを多幹樹形と呼びます。

    単幹(たんかん)

    根元から上部まで1本立ちの樹のことを言います。

    五幹

    幹が5本に分かれているもの。

    七幹

    幹が7本に分かれているもの。

    ■偶数の幹立ちは好まれない傾向があり、「四幹」、「六幹」などという樹形はほとんど見られません。

    根連なり

    厳しい風雪によって吹き倒された樹が、幹まで土に埋もれた後、生きるために枝を起こして、幹として立ち上がっている姿を想像して下さい。1つの根元から複数の幹が左右に伸びており、それらの木々が身を寄せ合うように連なっている樹形となります。この樹形においては、同一の根から立っている幹なので統一の美が色濃く感じられます。

    ★樹形づくりのポイント

    この樹形を作るには、株立やヒコバエ(※樹木の根元から不定芽が出ること)の出ている素材を使って、ある程度地表を這わせてから、立ち上げて幹として育てていきます。この際、主幹から各幹までの間隔も、遠近をつけて、太さ細さ、長短などに変化をつけます。幹は、直線ではなく、適度に曲線を形成しながら地表を走らせていけば、自然な趣が出てくるでしょう。

    根張り

    根が連なっていることが大事なので、太根を鉢土に見え隠れさせ、それとなく立派な根張りに見せます。

    幹の個性を生かし、高さや太さなどの調和を図り、主幹に焦点を置いて、他の幹は主幹に同調するような幹模様にします。

    樹形にまとまりをだすためにも、枝の茂り具合、密集具合などの様子を主幹に合わせるようにします。

    樹冠

    各々の樹冠は個別の幹のように見られることが望ましいですが、全体的なバランスを重視します。

    多幹仕立てて根の広がりもあるため、面の広い平鉢か、浅い鉢が相応です。

    根連なりに向く樹種

    ゴヨウマツ、エゾマツ、シンパク、トショウ、スギ、モミジ、カエデ、サツキなど

    6.蟠幹(ばんかん)


    幹が雪などで押し潰されて、根元から曲がってねじれた樹形を言います。この樹形は長年の風雪に痛めつけられ傷つけながら曲幹となって生き抜いた樹の姿を投影しています。基本的には太幹であることが条件であり、豪壮な感じのする樹形です。人工的にこの趣を表現するのは難しく、幻の樹形とも言われ、昨今ではあまりお目にかからなくなりました。

    ★樹形作りのポイント

    前述のように、この樹形は自然の厳しさによって作られているので、針金をかけて作為的に樹形を作ろうとしても、素質がなければできないものです。それでも仕立てる場合は、長めの苗の根元に近い部分を1?2回ほど巻いたり結んだりして低くするようにします。立ち上がりの部分が特に力強さがあるので、根張りも十分に露出させたり、根元から最初に屈曲している部分を鉢土の際までおろして太さを補ったりします。

    根張り

    片根張りのものがほとんどであり、八方根張りはあまりありません。

    幹が著しく捻れている、捻れて成長していて、強い屈曲が前後左右にあります。サバ幹やジンがあるものがよくあります。

    幹に合わせて調和が取れるようにねじれているようにします。幹にジンがあれば枝にもジンがあるようにします。

    樹冠

    幹が強く捻れているのに合わせ、風雪に耐え生き抜いた感じを出し、枝や幹に調和したものにすること。

    蟠幹向きの樹種

    ゴヨウマツ、シンパク、アカマツ、クロマツ、イチイ、トショウ、カエデ、ウメ、ピラカンサなど

    寄せ植え


    数本?数十本の樹を1つの鉢に植え込んで、森林、樹林の風景を表現する樹形です。バランスよく樹を組み合わせて、調和の取れた美しい景色ができあがります。調和美を体現するためにも、1本で仕立てるような個性のある樹は向いていないと言えます。概して言えば、個性のない樹を集めて、全体の美を形作るものです。

    ★樹形づくりのポイント

    一本木として通常マイナス要素と取られる、片根や片根の素材でも、寄せ植えでは、うまく寄せ合うことで、風情のある盆栽に仕立てることができます。作る場合はある程度までは奇数を使うことが習慣になっていますので注意して下さい。正面から見た時に、できれば幹が重なったり、交差したりしないようにします。最も高いものを主木とし、他の樹が主木より高くならないようにして下さい。

    根張り

    複数の樹の集合体なので、それぞれの樹の根張りはさほど重要ではありませんが中心となる樹はしっかりとした根張りがよいかもしれません。

    各々の木の審美性よりも全体としての美に重きを置くので中心になる木を決め、それに調和した幹模様の木を集めます。

    下方には枝はあまり必要ではなく、上方に枝が集中的に付いているのが望ましいです。

    樹冠

    各々の樹冠は個別ものとしてそれぞれがまとまっているものにします。

    森林、樹林、山野の風景を表すには鉢内に広さと空間が必要なので、薄手の鉢がふさわしいです。深い鉢や、口径の狭い鉢は寄せ植えのよさを十分に活かせません。

    寄せ植え向きの樹種

    エゾマツ、スギ、ヒノキ、トショウ、ブナ、ソロ、カエデ、モミジ、ヒメシャラ、ハゼなど

    石付き

    石に樹や草を付けて、断崖絶壁にしがみついている樹、孤島や山頂で強風に耐えながら生えている樹などの景色を表す樹形です。石・水・植物の3つの素材を使って、小さな石上に大自然を作り出したものです。自然美をお手本に、素材を組み合わせ、凝縮、理想化した造形芸術です。石の美しさ、根の趣、樹の豪壮さなどが調和したものが良いとされます。

    ★樹形づくりのポイント

    石付きは、石によって付ける樹や草が決まると言われています。石に合わせて樹を用意する場合と、樹に合わせて石を選ぶ場合があります。鉢植えのような頻度で植え替えができず、1度樹を植え付けると長期に渡って観賞するので、その過程で石が負けないようなものを選ぶ必要があります。大自然の凝縮した姿を表すために、小さいながらも大木の風情が感じられ、かつ石に馴染むような樹を選びます。

    根張り

    石に付けると根が発達するので、根張りについてはさほど問題ではありませんが、付ける前に根を長く伸ばしておく必要があります。

    樹と石が調和するように幹模様をつけます。

    平石に付ける場合は上方に枝を集中させ、立ち石につける場合は横広がりの長めの枝のものを用います。

    樹冠

    まとまっていて、生気に溢れている樹冠が理想です。

    石付き向きの樹種

    ゴヨウマツ、クロマツ、アカマツ、トショウ、シンパク、モミジ、カエデ、ヒノキ、チョウジュバイ、サツキなど

    石抱き


    根が鉢土の中に入り、樹が石を抱きかかえたようになっているもの。

    石上樹 


    石の頂に樹を植えて、根が鉢土に届かないもの。

    ほうきづくり

    枝先が無数の小枝に別れていて、ほうきを逆さにしたような形が特徴的な樹形です。根元から、真っすぐに立ち上がり、途中から四方に枝を伸ばして、半円形の樹冠をしています。枝の素直な分岐と、樹の高さと分岐点のバランスが鑑賞のポイントとなります。1つの芯から枝分かれする芯立ちと、2つに分かれた幹から枝を広げる二本立ち“があります。

    ★樹形づくりのポイント

    枝が鋭角的に伸びる性質の素材を選ぶようにします。水平に伸びる性質のものを使用すると、針金で矯正しても針金を外すと、やはり水平に伸ばそうとしてしまうので、常に矯正していなければなりません。他、枝の出方以外に、枝分かれの仕方も大切です。1箇所からたくさんの枝が出るようなものは、2、3本を残して元から切り取って、すっきりさせます。枝の太さも同じくらいに保つため、太すぎる枝はなくしてしまいます。

    根張り

    力強く、八方にしっかりと根を張っている安定感のあるものよいです。

    上方にいくに従い、幹と枝の境目がなくなっていき、分岐していく感じです。

    放射状に上に広がって、均一感と揺るぎない安定感を醸し出すものが望ましいです。

    樹冠

    凹凸がなく、放射線状に丸みを帯びて、巧緻な小枝で樹が覆われている有体です。

    ほうき作り向きの樹

    ケヤキ、ニレケヤキ、モミジ、カエデ、エノキなど

    長方鉢か楕円鉢が相応です。樹冠に広がりがあるため、鉢も盤面と樹冠のバランスを考えて選びます。

    筏吹き

    幹が倒れ、そこから出た枝が幹となり、調和の取れた姿にまとめた多幹樹形の一種。盆栽の作り、樹形がまるで筏のような形に見えるためこの名がついたようです。幹が倒れ、幹から出た枝が幹となった多幹樹形のひとつで、元来は山中でよく見られる姿でした。根連なりと異なり、筏吹きは人工の根連なりとなります。

    ★樹形づくりのポイント

    片枝の木を倒して伏せて、幹を根張りのように仕立てる手法があります。太い幹の樹の樹皮をそいで発根をさせ、切り取ってから半分庭って数年ほど仕立てると、枝が幹のようになってそこからまた枝が出て形を作ります。長期に渡って作っていく場合は、樹勢の強いもの同士、少し距離を話して植えて、根張りを露出させながら交差する根を利用し、融合させて作り方もあります。

    根張り

    片枝の樹を寝かせて、幹を根張りのように仕立てる方法を取ります。作ってすぐは個々に幹の根元から根を出させるため根張りのいい樹少ないです。

    それぞれの幹の高さ低さ、太さ細さのバランスを図ること。主幹を決め、他の幹の長さ太さに弾みがつくようにします。

    各枝がそれぞれの幹と調和の取れたものにします。幹が寝かされ伸びた枝はそれぞれが樹の姿となります。

    樹冠

    各々の樹冠は個別の幹として捉えられることが好ましいですが、調和の取れたものにします。

    幹を根張りのように仕立てており、根の広がりもあるため、面の広い平鉢か、浅い鉢が相応です。

    筏吹き向きの樹種

    ゴヨウマツ、エゾマツ、シンパク、ブナ、モミジ、カエデ、ヒメシャラ、サツキなど

    根上がり


    山の斜面や、絶壁、海岸などで、風雨や波、なだれなどにより、根が高くなり、露出した
    樹形です。長く伸びる根を切らずに、伸びるまま育てていきます。根と根の間に隙間があります。

    根洗い

     
    大雨や河川の氾濫などで根元の土砂が攫われたり、侵食したりして、根がむき出しになった姿を表した樹形です。太い根を切り詰め、細い根を増やしながら根を伸ばしていきます。根と根の間に隙間がありません。

    この記事を書いた人

    高村雅子
    高村雅子
    盆栽妙の店長 盆栽家。三重県鈴鹿の田舎生まれ。大学進学を機に大阪に出て卒業後は秘書として企業で働く。結婚して退職、子育てに奮闘。子供も大きくなり、自分の時間が持てるようになったので、かねてより大好きだった植物をもっと勉強するべく、盆栽の世界へ踏み入ることに。同郷の盆栽職人 太田重幸に師事し、盆栽の奥深さを修行した後、自宅で教室を開業。2007年にインターネット盆栽販売店 盆栽妙をオープンし、盆栽メルマガ登録数日本一に。盆栽はじめるサポートに日々奮闘中。

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