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盆栽をどこに置く?専門家が教えるしっかり育てるための自宅環境チェック項目

はじめて盆栽を手にしてどこに置けばいいのか悩んでいる方必見。環境に左右されやすいデリケートな盆栽だからしっかりとチェックしたい自宅の環境
高村雅子
高村雅子
盆栽妙 店長
  • 更新日:2022/8/23
  • 投稿日:2020/6/18
  1. 基本の管理
  2. 初心者
盆栽をどこに置く?専門家が教えるしっかり育てるための自宅環境チェック項目 せっかく育てた盆栽を、ずっと鑑賞しておきたい、観葉植物のように家の中で育てたいと思う場合もあるかもしれませんが、盆栽は基本的には屋外管理。日照や風通しなどいくつかの条件があります。条件を踏まえた上で置き場所を選ばなければ、すぐに盆栽は枯れてしまいます。盆栽を長く慈しむためにも置き場所について知っておきましょう。

目次

  • 盆栽の置き場所
  • 置き場所の条件
  • 盆栽を置いてはいけない場所
  • 季節ごとの対策について
  • マンション・アパートなど限られたスペースでの生育
    ベランダに置く場合
    出窓に置く場合
    室内で育てる場合
  • 室内で育てる工夫

盆栽の置き場所

盆栽を育てていく上で、置き場所の選択はとても重要です。 盆栽についてよくある誤解は、観葉植物と同じく屋内で育てるという認識です。室内の日が当たる場所で、屋内管理をしたつもりが枯らしてしまった、ということを聞くこともありますが、盆栽は屋外管理が基本です

四季を通じて盆栽を健やかに育てるためには、置き場所に気を配ることが大事です。 どんなよい盆栽、素材を手に入れても、置き場所次第で、うまく育たない、枯れてしまう、ということもあります。

広い庭のある家であれば、好きな場所に棚を置いて盆栽を置いておくことも可能ですが、小さい庭やお庭のない家、マンションやアパートなどであれば、限られたスペースでいかに盆栽をよい環境で育てるか、という心構えが必要となってきます。

スペースがなくとも、盆栽のある生活を楽しみ、立派な盆栽を育てている愛好家の方もたくさんいらっしゃいます。 まずは、ご自宅を見回して、盆栽にとってよい環境を探しましょう。住環境に合わせて工夫しながら盆栽との生活をぜひ楽しんでみて下さい。 庭のある家、庭の小さい家、マンション、アパート等々、住環境に合った置き場所を確保しましょう。

置き場所の条件

1.日当たりが良い

植物は葉で行われる光合成により、生育のための酸素と栄養分を自ら作っているというのを、中学校の理科の授業で習ったことがあるのではないでしょうか。 光合成は太陽の働きによるものなので、日当たりがよければ、樹も健やかに育ちます。盆栽のほとんどの樹種が光を好む植物なので、置き場所も朝から日が暮れるまでよく陽が当たる場所が最適です。かといって地植えの庭木や野菜などとは違い、鉢が小さいので、一日中日光に当てるとすぐ乾いてしまい、自然の機能を十分に活かすことができません。依って朝からお昼ごろまで、柔らかい陽が当たる場所がいいでしょう。

日当たりがよくない場所でも、1日4時間前後の直射日光があたる場所に盆栽を置いて管理することを心がけて下さい。 但し、盆栽は日当たりのいい場所を好みますが、樹種によって夏の強い日差しで葉を傷めることもあり、見た目や樹勢(※枝・葉・幹など樹の状態)に影響もしますので、置き場所を移動するか、日よけの工夫が必要です。最近の真夏の日差しは強烈なので、遮光率が高めの遮光ネットがおすすです。1日4?5時間程度は日の光を浴びさせましょう。

2.風通しがいい

盆栽において日当たりは重要ですが、風通しも不可欠な条件です。風が全く抜けていかないような環境では、湿気や熱がこもって、枝枯れ、根腐れ、病気等の原因になります。それを避けるためにも、周囲に障害物がない状態を意識し、建物や壁から離す、鉢と鉢の間隔を空ける、枝葉の量を調整するなど、風の通りがよいようにしてあげなければなりません。

逆に風通しが良すぎても盆栽がすぐに乾いてしまい、水やりが大変ですので、ある程度風が抜けるようであれば問題ありません。 とにかく空気の澱みを作らないようにし、適度な微風が通っている場所で盆栽を管理すると、害虫が付着しにくく、害虫を防ぐことができます。適度な風により、土が乾燥して根腐れしにくくなり、幹や枝が風に当たることできれいな樹形になり、葉もしっかり育ちます。

強風すぎると、倒れたり、枝が折れたり、実物、花物などが、鑑賞できないうちに落ちてしまう可能性があるので注意が必要です。

1と2の条件を踏まえると、

東南に日光を遮る建物や樹木がなく、西北には風を防ぐ壁や塀などがある場所

この条件に当てはまる場所は、陽当たりが良く強風が当たらない。

3.盆栽の管理がしやすい

盆栽は鑑賞の楽しみはもちろんですが、育て愛しむ楽しみが大きいものです。盆栽は毎日の水やり、雑草駆除、肥料やり、定期的な剪定、消毒などの作業が必要なので、これらの作業がしやすく、目が届きやすい所で管理するのが適切です。 身近な場所に置いて管理すれば、目が届きやすく、植物の状態もよくわかります。水切れ、肥料切れ、病害虫の発生、ちょっとした変化にも敏感になり、気づきやすくなります。

日当たりがよい、調整しやすい
適度に風通しがよい 
目がよく届く場所がよい

その他の条件

犬猫などに荒らされる被害の少ない場所
盆栽を並べたときに美観が高められる場所
盗難に合う被害のない場所

盆栽の置き場所の条件については大体おわかりになったかと思いますが、盆栽を置いてはいけない場所について見ていきましょう。

盆栽を置いてはいけない場所

1.石、地面やコンクリートの上

日光が直接当たるような場所の庭石の上、ベランダのコンクリートの上は温度が上がりすぎることが多く、輻射熱(ふくしゃねつ・※床からの照り返しの熱)が葉の裏や枝、幹などに当たり、盆栽が枯れる原因ともなり注意が必要です。 また、石やコンクリートの上では、日中の日差しで周りの温度が上がってしまい、盆栽にとって過酷な環境となってしまいます。 土の上に直接鉢を置くのも、温度の問題もありますが、泥はねによって幹や葉が汚れ、生育も悪くなり、病気が感染したり、害虫が侵入したりする原因にもなります。鉢底の穴からミミズ、ナメクジやアリなどが入ってくる場合も考えられます。根が地面に入り込む、足で鉢を引っ掛けるなどといったトラブルもあるようです。

2.家の中

盆栽は家の中に置いておくものだと思っていたという方、切り花や観葉植物のように、インテリアの一部として、屋内でずっと鑑賞しておきたいと思っている方もいらっしゃるかもしれません。室内では夏は冷房、冬は暖房が付いており、乾燥もしています。 必ず枯れるというわけではありませんが、日光が十分に当たらず、風通しもよいとはいえませんので、盆栽にとって家の中は、快適な場所ではありません。過酷といってもいいでしょう。 鑑賞する際は数鉢で2,3日ごとに交代制にしたり、室内に置く時間を数時間にしたりするとよいでしょう。

3.西日のあたる場所

実は西日が当たること自体は悪いことではありません。西日が問題なのは鉢の温度変化に関してなのです。特に夏場ですが、午後に最高気温に達して、しばらくしてから、鉢内の温度が最高になります。その後、鉢の中の温度は緩やかに降下していくのですが、西日が射すことにより、鉢を高温のままにしてしまうことになってしまいます。それにより、葉が日焼けしたり根腐れしたりと、植物の生育に悪影響を及ぼします。 気温の低い時期や、住宅環境により日当たりがよくない環境の中では、西日も貴重な日光源なので当てても構いません。

4.室外機の近く

冷房していると、エアコンの室外機は室内の熱い空気を集めて外に出しますので、かなりの熱風が吹き出ます。この室外機の風にあたると、熱い空気によって盆栽が乾燥して枯れてしまいます。 スペースに限りがあってどうしても室外機の前でないと、という場合はエアコンの室外機に取り付ける風光調整板というのがあるので、室外機に取り付けて風向きを上の方に吹き出すようにするということもできます。 エアコンの室外機の上なら、ラックを置いて栽培スペースとして利用することも可能です。

上記の盆栽の置き場所の条件、置いてはいけない場所を考慮した上で 盆栽は棚の上に置きましょう!!

市販のフラワースタンドや盆栽台を利用するのもいいですが、木の箱、古い椅子や棚、ブロックを積み重ねた上に板を渡したものでも代用できます。縁台や焚き火用の五徳、低くはなってしまいますが、すのこ台も利用できます。作業しやすく、植物にとってもいい棚の高さは60cm前後、70~90cmの腰の高さが理想です。DIYで、木製板やイレクターパイプなどで、オリジナルの盆栽棚を作ってみると盆栽の楽しさが増すかもしれません。

季節ごとの対策について

過ごしやすい春や秋は、日照や気温も比較的安定していて、人間にとっても植物にとっても過ごしやすいと言えるでしょう。夏や冬は、日差しや、寒気を避けた置き場所、対策を考えましょう。

マンション・アパートなど限られたスペースでの生育

ベランダに置く場合

マンションやアパートなどの集合住宅ではベランダが盆栽の主な置き場所になる場合が多いと思います。ベランダを利用する場合は、建物の管理規約を守ることをまず心がけましょう。規約によっては、棚の設置を禁止されていることもあります。ご近所づきあいもありますし、上下左右の方に、水やりや手入れなどで、迷惑にならないようにしなければなりません。盆栽に限ったことではありませんが、‘樹木の枝葉や土が風で他のお宅のベランダに紛れ込む’、‘水やりの水が下の階のベランダに漏れる’、などという恐れもあります。鉢を鉢皿に乗せたり、発泡スチロールの箱などを利用したりして、水や土を垂れ流さないようにするといった工夫も大切です。

一番気を付けなければならないのが、鉢や棚が強風や何らかの力、はずみで落下してしまうということです。ベランダに園芸ネットを張ったりして、重心のしっかりした風で飛ばされないような棚を選ぶ、鉢を棚に針金で止める、といった落下防止の工夫も必要になります。

出窓に置く場合

家の外側に設置された出窓に置く際も、注意したいのは、落下しないようにすることです。園芸ネットを張って落下防止対策をしておけば安心です。また、泥水が流れ出さないように、受け皿を使うといいでしょう。

室内で育てる場合

住宅事情で、庭、ベランダや出窓もないという場合もあるかもしれません。それでも盆栽は育ててみたい、という方もいらっしゃるかと思います。そんな方のために室内で育てる奥の手をご紹介します。

前述の盆栽の置き場所と、置いてはいけない場所について読んで頂いた方にはわかるかと思いますが、室内ではなぜ盆栽を生育しにくいのか考えてみましょう。

日光が確保できない
風の通りが悪い
温度変化が屋外より格段に少ない
冷暖房により乾燥しやすい

要するに、盆栽は陽当たり、風通し、湿度、温度、に気を付けて育てるということ。

以上の点を考慮して室内での盆栽の置き場所や対処方法を決めます。

日光の当たりやすい、できるだけ窓の近くに置く
エアコンの風が当たらない場所に置く
夏は3日、冬は1週間程度、1日4,5時間外に置いて日光に当てる
室内を半日陰と捉えて、室内でも育てやすい樹種を選ぶ

室内向きの盆栽樹種

特に向いている樹種

 萌芽力が強いため、様々な樹形に仕立てることができる楽しい樹種。性質も強健で室内環境にも耐える力を持っています。1年を通して楽しめますので、初心者の方に向いている樹種と言えます。

藤 丈夫で育てやすく、剪定を間違えなければ比較的簡単に管理できます。生育期は3日程度で屋外に出す必要がありますが、秋から冬にかけては暖房の当たらない室内に置いたままでも丈夫に育ちます。

桜 基本的には日光を好みますが、半日陰でも環境に合わせて育ちます。風通しのよい場所に置いて下さい。根の生育も早く水を好みますが、室内では週1,2回の水やりでよいでしょう。室内では2,3日を目安にして下さい。

向いている樹種

姫沙羅(ヒメシャラ) 半日陰の環境が向いています。日当たりと風通しのよい場所に置いて夏の強い日差しは避けるようにして下さい。耐寒性はありますが、霜に当たらないように保護する必要があります。

山紅葉(ヤマモミジ) 屋外で育てる方がいいに越したことはありませんが、比較的夏や冬など気候の温度変化に強いので初心者でも扱いやすい樹種です。夏は強い日差しで葉焼けを起こしやすので室内の風通しのよい場所に置きましょう。

紫陽花(アジサイ) 半日陰を好みます。暑さ寒さに強いので、育てやすい樹種です。日光のあまり当たらない場所でも育ちますが、花付きが悪くなることがあります。冬場は日光が当たらなくても大丈夫ですが、寒風を避けましょう。

室内育てる工夫

置き場所の工夫以外に室内で育てる秘訣を紹介しましょう。

肥料に工夫する

室内に飾る盆栽は総じて小さいものが多く、20cm以下の小品盆栽、10cm以下のミニ盆栽、3?4cm以下の豆盆栽が主流です。鉢が小さければ、用土も少なく、栄養分を十分に蓄えることができません。基本的に春(成長期)と秋(寒さ対策)に与え、生長が止まる真夏や真冬には与えないのが一般的。1粒で2カ月程度効果が続く固形タイプが使いやすくて便利です。

器具を使って自然に近い環境を作る

植物を屋内栽培するための照明が市販されています。寿命も長く、コストを抑えられ、手軽に設置できる植物育成用のLED ライトがおすすめです。また、近年盆栽用の人工太陽照明も開発され販売されているようです。 ※盆栽生育には4000ルクス程度以上の明るさが必要と言われています。因みに屋外の快晴な場合の明るさが100,000ルクス、室内リビングで200ルクス程度です。

温度、湿度管理をするために、室内用の小型の温室を利用するという手段もあります。 重量があるもの、高額なものが多いので、置き場所や使い方をよく考えた上で購入するようにしましょう。

様々な条件を挙げましたが、盆栽にとって一番いい置き場所は、それぞれの植物が育った環境に、できるだけ近い場所とも言えましょう。例えば、森で育った植物は1日のうちの半分くらいが日陰になる場所、野原や川べりで育った植物は、日当たりのいい場所を好みます。

盆栽に仕立てるような植物は、そもそも自然の環境が一番好きであり、暑さ寒さに負けず強くなっていきます。

鉢の中に入った盆栽は、植物自体の特性を自身で活かして育っていく、というわけにはいきませんので、成育者が植物に適した環境を作ってあげることになります。 そのような点を念頭に置いておくと個々の盆栽について理解が深まり、よりお世話もしやすくなるかもしれません。

この記事を書いた人

高村雅子
高村雅子
盆栽妙の店長 盆栽家。三重県鈴鹿の田舎生まれ。大学進学を機に大阪に出て卒業後は秘書として企業で働く。結婚して退職、子育てに奮闘。子供も大きくなり、自分の時間が持てるようになったので、かねてより大好きだった植物をもっと勉強するべく、盆栽の世界へ踏み入ることに。同郷の盆栽職人 太田重幸に師事し、盆栽の奥深さを修行した後、自宅で教室を開業。2007年にインターネット盆栽販売店 盆栽妙をオープンし、盆栽メルマガ登録数日本一に。盆栽はじめるサポートに日々奮闘中。

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