盆栽を仕入れに高松に来る前にバイヤーが知っておきたい7つのこと
- バイヤーとして失敗しない盆栽の仕入れ、高松に買付に来る前に知っておきたい知識
- 高村雅子
- 盆栽妙 店長
- 更新日:2022/8/25
- 投稿日:2022/8/25
- 高松盆栽
- 香川
- 国分寺
- 鬼無
目次
- 高松盆栽について
- 高松盆栽の代表的樹種
- 高松にある盆栽園
- 高松の盆栽職人
- 香川県の風土
- 盆栽関連イベント
- 盆栽ツーリズム
- まとめ
1.高松盆栽について
香川県高松市の西部に位置する、鬼無・国分寺地区には、黒松、錦松、五葉松を育てる珍しい松の畑が広がっており、盆栽園も数多くあります。香川県は日本一の松盆栽の産地と言われ、この高松盆栽で国内出荷量80%のシェアを占めています。
高松の盆栽生産の歴史は古く、200年ほど前、江戸時代から始まりました。高松盆栽の歴史については下記で詳しく書きましたのでご興味あればぜひご一読ください。
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- 高松盆栽
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高松は気候的にも盆栽の生育に適した環境でした。花崗岩系の砂壌土で水はけがよく、雨が少なく、日照時間が長いという点で恵まれた立地条件、瀬戸内海沿岸の気候が、他の産地にはない、風格のある盆栽を生産することを可能にしたのです。
育成などで培われた剪定や接ぎ木の技術を伝承、改良していく、全国随一の松盆栽の産地として成長しました。
水はけのよい土地で育った香川県の松盆栽は、その姿が美しいのはもちろんのこと、「根腐れしにくく、傷まない」と定評があります。
日本一の松盆栽の産地から世界一へと
高松盆栽が世界から注目される大きなきっかけとなったのが、高松市で2011年に開催された「第11回アジア太平洋盆栽水石高松大会(ASPAC)」です。日本で初めての開催となり、アジア、欧米諸国など40以上もの国々から盆栽ファンが集結しました。また、2014年の高松盆栽大会にも、世界各国から大勢の盆栽愛好家が訪れ、盆栽の聖地としての知名度を決定的にしました。
今では、日本一の松盆栽の産地から世界一の産地として知名度も上がり、アジア、欧米諸国から、バイヤーが絶えることなく訪れています。
盆栽輸出の現状
香川県の盆栽は主に高松市で栽培されており、栽培面積は12ヘクタール、出荷額は2億円以上です。ライフスタイル、住居構造の変化などで盆栽の国内市場は縮小傾向にあり、高齢化に伴った生産農家の減少などの問題が生じています。
一方、海外では「BONSAI」として辞書に載るほど認知され、日本の芸術文化として高く評価されて人気が高まっており、県内で生産される盆栽・植木等の輸出額は年々伸びています。
盆栽の輸出に関しては、関東圏の一大産地である埼玉県と香川県でほぼ2分しています。樹種別出荷・販売量で見ると、クロマツが40%、次いでシンパク、サツキ・ツツジがそれぞれ14%、モミジ・カエデが13%となっています。(2015年 農林水産省調べ)
高松市の盆栽の輸出先は、植物検疫の条件もあり、台湾が最も多く、全体の約8割を占めており、米国、中国、EUなどとなっています。
盆栽を輸出する際には、機種や相手国によって検疫の条件が違っており、各々に対応していく必要があります。例えばEUでは、マツ属の輸入が禁止されていますが、条件を満たした五葉松は例外であり、ヒノキ属、ビャクシン属も可能です。
2.高松盆栽の代表的樹種
高松は松の生産地なので、数多くの松盆栽があります。代表的な樹種をご紹介します。高松に松盆栽以外はないイメージをもっている人もいるようですが、そんなことはありません。雑木や花物も多く生産されており現在では盆栽の一大産地といってもよいでしょう。
黒松
五葉松に比べて葉が長く剛直なのが特徴です。男らしい盆栽として五葉松と人気を二分する盆栽の代表的な樹種です。高松の雨の少なく日照時間の長い気候が世界を代表する黒松の産地となり数々の名品を生み出しました。競技会で入賞する黒松の多くは高松盆栽です。高松では黒松盆栽に心血を注ぐ職人たちが大勢います。
五葉松
樹齢100年を超す山取りの五葉松から、実生の五葉松、接ぎ木の五葉松など、小さいものから大きなものまで多数あります。黒松を台木に接いだ五葉松は丈夫で成長も早いことから高松では多く見られる非常にポピュラーな盆栽です。
錦松
樹皮がコルク層になって亀甲状に厚く割れます。黒松が変異したものです。錦松は黒松の変種で、高松が発祥の地。荒々しく波打ったように幹を覆った樹皮が特徴で、古木感を醸しています。黒松を知り尽くした高松の生産者だからこそ生まれた品種といえます。
3.盆栽園
高松市内の中心 高松駅よりほど近いJR鬼無駅から国分駅までの間に100件近くの盆栽園と盆栽畑を見て回ることが出来ます。
それぞれの盆栽園を訪れて盆栽を仕入れることも可能です。鬼無、国分寺エリアに点在する盆栽園は、それぞれ特徴を持った盆栽を生産しています。しかしながら、1日では盆栽園を回りきれず目的の盆栽を見つけることができないかもしれません。そんな時は、国分寺にある盆栽センターを訪れると良いです。
盆栽センターには各盆栽園の盆栽が常時数万点販売されています。そこで購入することもできますが、気になる盆栽があれば、どこの盆栽園か教えてもらえるので、直接行ってみるのもいいでしょう。盆栽センターは各盆栽園のインフォメーションセンターの役割もしています。
仕入れに来たバイヤーは、盆栽センターのスタッフに希望の盆栽や数量を伝えると、いろいろ情報を教えてもらえます。
来る前にどんな盆栽が仕入れられるのか不安な場合はネットであらかじめ見ておくのも良いでしょう。高松盆栽でもネット販売をしている事業者があります。
4.盆栽職人
高松盆栽の代表的な職人です。知らないのは日本人だけ、世界で活躍する盆栽職人 平松浩二さんのストーリはこちら
5.香川県の風土
香川県は日本で一番小さい都道府県で、面積は1876km2。(因みにロンドン:1572km2、ニューヨー:783km2、東京:622km2)。日本の西方に位置し、愛媛県、高知県、徳島県の3県と共に、東京などがある本州から離れた島の1つ、四国を構成し、瀬戸大橋で岡山県と結ばれています。
内海である瀬戸内海に面し、岡山県対岸の香川県本土と、3年毎に開かれる国際的な芸術祭、瀬戸内国際芸術祭の開催場所ともなる小豆島、直島などの沖合の112の島(※うち有人島:24)から成り立ちます。
四国の東北部に位置し、東西に長い半月形で、南部に讃岐山脈が面なし、北部には1万4000余りのため池が点在する讃岐平野が広がっています。
気候は瀬戸内海式気候で年間を通じ比較的温暖で、降水量は少なく、日照時間が多いという特性があります。海あり山ありの美しい自然と温暖な気候に恵まれた風光明媚な場所であり、国内外から多くの人が訪れます。外国人延べ宿泊者数は、近年において全国的にもトップの伸び率を記録しています。
四国の玄関口高松市
香川県の中央に位置し、県庁所在地である高松市。四国の玄関口として、多くの国家機関や全国規模の企業の視点があり、四国の政治経済に置ける中心拠点となっています。港町として発展してきた特性上、北側に海に面して市街地があり、南側には讃岐山脈を控え、女木島、男木島などをはじめとする島々が点在し、美景を生んでいます。都市的利便性と自然的環境が享受できるバランスの取れた都市となっています。
鬼無地区
高松市北西部、瀬戸内海に面した勝賀山(標高364m)の裾野に広がっているエリアです。全域が高松平野の一部で、この地区でもため池が多数存在しています。古くから桃太郎伝説の発祥の地として知られ、熊野権現桃太郎神社を有し、毎年3月末には「桃太郎まつり」が開催されています。
県指定史跡で5世紀頃建造されたという全長60.5mの前方後円墳や、市指定史跡の中世讃岐国の豪族の城跡、勝賀山の山頂近くにある勝賀城跡、6世紀末から7世紀前半にかけて築かれたという県内でも大型の横穴式石室墳、古宮古墳などがあります。
地区内唯一の幹線道路は県道第33号高松善通寺線で、鬼無駅以北は両側に店や住宅が密集しています。
国分寺地区
高松市西部に隣接し、東西3.4 km、南北7.5kmの南北に長い盆地状の町です。なだらかな丘陵地に囲まれ、大小のため池が点在しており、のどかな田園風景が広がっています。
古くから、政治・文化・宗教の中心として栄えてきており、讃岐国分寺跡は国の特別史跡に指定されており、資料館があります。資料館には発掘調査で出土した遺跡、金堂の模型などが展示されており、国分寺の歴史が紹介されています。
創建756年以前と言われる讃岐国分寺には四国八十八ヶ所霊場の第80番札所があります。
町内を東西に横切る国道11号から高松空港、高松自動車道、瀬戸大橋などへのアクセスもしやすく、高松市郊外のベッドタウンとして発展してきました。
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? | 香川県 | 高松市 | 高松市国分寺地区 | 高松市鬼無地区 |
人口 | 約96万人 | 約42万7,000人 | 約2万4,000人 | 約6,000人 |
面積 | 1877 km2 | 375.53km2 | 26.25 km2 | 6.98 km2 |
(※香川県人口2019年3月1日時点推計)
(※高松市、国分寺町、鬼無地区人口 2019年6月1日時点)
6.盆栽関連イベント
鬼無・国分寺では春・秋に大々的な盆栽関連のイベントが開催されています。加えて、鬼無地区で毎月行われている、植木市や、玉藻公園での植木市など盆栽愛好家に限らず、一般の方も盆栽に触れる機会が年間を通して少なからずあります。
鬼無グリーンフェア
開催時期:4月下旬
開催場所:香川県鬼無植木盆栽センター
香川県鬼無植木盆栽センターの組合員が丹精込めて育てた盆栽や植木・苗木・花などが展示販売される。抽選会や、相談会、オークションなども行われる。
きなし盆栽植木まつり
開催時期:10月下旬
開催場所:香川県鬼無植木盆栽センター
香川特産の盆栽・植木・草花等、約500点種、1万点が展示即売される。盆栽の名品展、針金かけ体験、盆栽植木専門員による講習会、園芸全般の相談受付、オークションなどが実施される。
3 国分寺盆栽センター 春まつり(4月下旬)/秋まつり(9月下旬)
開催時期:春まつり 4月下旬
秋まつり 9月下旬
開催場所:国分寺盆栽センター
盆栽を中心に雑木や鉢花、山野草などを展示即売される。盆栽が3000鉢ほど出そろう。苔玉づくり教室や地元の盆栽家たちが育てた盆栽のオークションがある。
グリーンフェスタ国分寺
開催時期:10月下旬
開催場所:国分寺橘の丘公園多目的ホール
香川県内外の盆栽愛好家の所有する銘品、国内の盆栽展で賞を獲得した国宝級の盆栽が展示される。盆栽教室、子どもみこしの奉納、盆栽のオークション、もち投げ、どじょう汁の販売などがある。
鬼無地区 毎月2回の植木市
開催時期:毎月2回、第2・第4水曜日
開催場所:香川県鬼無植木盆栽センター
全国の盆栽屋さんが、庭木・盆栽などを持ち寄り、セリを行う。基本的には業者間のやりとりだが、登録の上、所定の登録料を払えば参加できる。
玉藻公園「春の植木市」
開催時期:3月上旬?4月上旬
開催場所:史跡高松城跡 玉藻公園
草花の鉢植えから、松盆栽・庭木まで約1500点が展示即売される。城内で行われるため、春の気配が漂う城跡の散策も合わせて楽しめる。
※要入園料:大人200円、子ども100円
7.盆栽ツーリズム
日本一の松盆栽の産地である香川県。日本屈指の盆栽の郷だけあり、盆栽の歴史と伝統、現在を感じられるスポットが香川県には多々あります。各所を巡って、存分に盆栽に触れる小旅行をしてみるのもおすすめです。
JA香川県国分寺盆栽センター
盆栽の展示販売を行っている。五葉松、黒松、錦松などの松盆栽の他、楓、サキ、柿など雑木、花もの、実もの盆栽、山野草など合わせて8,000鉢を常時展示・販売している。
住所:高松市国分寺町国分353-1
電話番号:087-874-2795
開館時間:8:30?17:00
休館日:1月1?3日
駐車場/あり
香川県鬼無植木盆栽センター
住所:高松市鬼無町山口333-1
電話番号:087-882-4091
開館時間:9:00?14:00
休館日:
駐車場:あり
盆栽神社
高松市国分寺町の猪狩山のすそ野、国分寺町盆栽集出荷場すぐ側にある。盆栽の里に幸福が訪れることを祈念して、樹木の神様と草花の神様を祭った日本でただ一つの神社。
住所:高松市国分寺町新居3854
電話番号:087-874-2795
駐車場:あり(盆栽集出荷場横)
農村カフェ 開耶香房(さくやこうぼう)
元々は盆栽の産地高松市国分寺町で橋本正光園として盆栽栽培を行っていた。現在は山野草栽培に切り替え、農村カフェをオープン。苔玉づくりやガーデニング教室など四季に合わせたさまざまな農村メニューを用意。
住所:香川県高松市国分寺町新居2553-2
営業時間:10:00?16:00
電話番号:087-813-5287
駐車場:あり(10台)
体験:開催の5日前までに要予約(※体験内容により料金が異なる)
URL:開耶香房
オキオリーブ
6.3ヘクタールの畑にオリーブの木1,500本を育てている。「JOOP国際オリーブオイル コンテスト」で、国別部門最優秀賞を受賞したオイルを使った料理を提供するカフェや、ゲストハウスも運営している。
住所:香川県高松市西植田町4532
電話番号:087-880-7346
駐車場:あり
盆栽の郷
高松盆栽の歴史や文化の紹介の他、ツーリズムやワークショップなど盆栽に関する各種イベント活動などを実施していく拠点施設を整備。ビジターセンターとして盆栽を通した国内外や地域内外の交流を促進するための空間。
研修施設
国内外からの就農希望者などの盆栽技術の習得に向けた研修の受け入れのための、宿泊設備を備えた施設。盆栽産地の担い手はもちろんのこと、盆栽に興味がある方、自身のスキルアップを目指す方など様々な対象者に対応。
栗林公園
起源は16世紀末、100年以上造営が行われ1745年に完成。現在は国の特別名勝に指定され、文化財庭園では日本一の大きさ。約1400本もの美しく選定された松の木がある。ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンで三ツ星の評価を獲得。
住所:高松市栗林町1-20-16
電話:087-833-7411
開園日:年中無休
開園時間:ほぼ日の出から日没まで
入園料:一般 大人 410円 / 小人 170円
●栗林公園ボランティアガイド
ボランティアガイドは東門入園券売り場横に待機。料金は無料(入園料は有料)で1?1時間半ほど。団体の場合は予約が必要。
英語、中国語、韓国語でのガイドも可能(※要予約)。
予約状況や依頼内容によっては不可の場合もあり
電話:087-833-7411(栗林公園観光事務所)
玉藻公園/高松城跡
日本三大水城の一つ。国の史跡である高松城跡を整備した公園。兵が水門で瀬戸内海とつながっている。園内には国の名勝に指定されている披雲閣の庭園があり、月見櫓や水手御門らと共に国の重要文化財に指定されている。
住所:高松市玉藻町2-1
電話:087-851-1521
開園日:西門(3月)6:30?18:00・(4月)5:30?18:30、東門(3月)8:30?17:00・(4月)7:00?18:00
入場料:大人200円、小人100円
まとめ
高松は国内最大の生産地だけあって、盆栽のイベントなど数多く開催されています。盆栽のご当地キャラや地元メディアでも頻繁に取り上げられるほど香川県内では馴染みの深いものです。うどんで有名な香川県ですが、うどんだけじゃない何かをアピールしようと、近年では自治体が積極的に全国にPRしています。
盆栽を扱う事業者やバイヤーにとっても、マーケティングは気になるところ。今後も、盆栽の動向を積極的に配信していきますので、ぜひこの機会に高松に盆栽を仕入れにきて、ビジネスに大いに活用してください。
世の中の人に少しでも盆栽を知ってもらえると生産地としてもうれしいです。バイヤーのみなさんよろしくおねがいします!
この記事を書いた人
- 高村雅子
- 盆栽妙の店長 盆栽家。三重県鈴鹿の田舎生まれ。大学進学を機に大阪に出て卒業後は秘書として企業で働く。結婚して退職、子育てに奮闘。子供も大きくなり、自分の時間が持てるようになったので、かねてより大好きだった植物をもっと勉強するべく、盆栽の世界へ踏み入ることに。同郷の盆栽職人 太田重幸に師事し、盆栽の奥深さを修行した後、自宅で教室を開業。2007年にインターネット盆栽販売店 盆栽妙をオープンし、盆栽メルマガ登録数日本一に。盆栽はじめるサポートに日々奮闘中。